ちよちよみちよ




いけない。なんだか幸一さんが師匠に思えてきた。
そうだ、せっかくだからこれからギターを教えてもらおう。いつまでも埃を被せておくのはもったいないし、ギタリストになる夢なんて持ったらカッコイイじゃないか。
そうだ。そして僕は高校を卒業間近にして神妙な顔付きでこう言うんだ。

『千代、僕には夢があるんだよ。そう長くはここにいられない。残念だけど、君のそばにも、もういられなくなる』

そうしてしつこいくらいに送り迎えを繰り返したある日、千代は寂しそうに呟くに違いない。

『タケイチ、あがって行きなよ』

念願の千代のケツボヨヨンコースだ。
うむ。なんだかうまくいきそうだ。やっと僕にもツキが回ってくる。サワヤカボーイだけがいい思いをするなんてズルいじゃないか。僕や幸一さんのように、ごく地味に真面目に生きている男にだってご褒美があってもいいはずだ。
よし、うむ。今日から僕は、ギタリストを目指すドリーマーだ。そんな僕に、千代もきっと……
僕の顔はニヤケる。
ああ、いい匂いだなあ、千代の匂い。


「タケイチ君、鼻の穴、ふくらんでるよ」













おわり