バカって…。



本当にバカだ。



今頃気付いた。




急いで、那智に電話をかけた。



那智の声を聴きたい。


那智に伝えたい。



《――おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか―――》




電源、切ったのか…?


「………バカだ…」




わだかまりの正体。


何で気付かなかったんだろう。



急いで、那智が歩いていった方向を追いかけた。



途中で、一台の救急車が俺を追い越したのを気にも止めず、ただ追いかけた。



携帯は相変わらず繋がらない。



少し進んでいくと、やけに人が溢れていた。



救急車が停まっていて。


急いで通り抜けようとしたとき。



「俺は悪くねぇよ!
あの女が信号無視して歩いてきたんだ!

本当だよっ!」


柄の悪そうな男が、警官に訴えていた。