『貴亮を取らないで』 いつも彼女は泣きながらこの言葉を口にする。 あなたは貴亮の……誰なんですか? あたしに何が言いたいんですか? あなたの言う貴亮は貴の事なんですか? 疑問ばかりが頭を巡ってそれが嫌で頭(かぶり)を振って、思考を振り切る。 「…あつ……っ!!」 マグカップに手が当たりカップがぐらついた。 「……あっ………」