『来月引っ越しすることになったから。自分のもの荷造り始めといてね。』



学校から帰って来て部屋で着替える俺に母さんは言った。



「…部屋に入る前にノックくらいすれよ。」



そしてベッドに置いてあったスウェットに手を延ばす。



『ノックしたって返事しないじゃないの。』




心の準備ってものがあるだろう?



引っ越しか…次の家の部屋には鍵とか付いてるといいな。母さんはいつでも人の部屋にドカドカ入ってくるからな。



ベッドに腰掛けて部屋のテレビを付ける。




『段ボール用意したら部屋に置いておくわね。』



そうして部屋を出て行く。


『あ、肝心な事忘れてた。高校も今の所は通えなくなるから。来週転入試験頑張ってね!』




パタンと閉まるドアを呆気に取られながら見た。