本当は、もっと前からやってみたかったんだ、という。

 紫音は、「パティシエのたまご」と言う新しい顔を手に入れた。

「教師」でも、「ホスト」でもない。

 新しい夢に向かう紫音の瞳が。

 アレクサンド・ライトの紫色に染まるコトは。





 ……もう、きっとない。




 紫音は。

 夜になっても色の変わるコトのない。

 皆と同じ。

 なんの変哲もない、黒い瞳のままで、ユメに向かって、歩いて行くだろう。



 そして、わたしも。

 出来るコトならば。

 紫音のすぐアトを歩いて行きたいと思っている。


 紫音の想いを。

 自分自身の想いを。

 ……いろんな想いを、優しく抱きしめながら。






 わたしが、飛行場の屋上で、見守る中。

 紫音を乗せた白銀色の飛行機は。

 雲一つ無い、真っ青な空へと飛び立って行った。







 ……未来に向かって。
















      <了>


H20.7.10.AM3:00