彼は人魚姫!

「僕と結婚して欲しい」


吸い込まれそうな瞳に思わず頷きそうになってしまった。
ダメだ。しぃには過去の記憶がない。
記憶喪失だった。
そして。しぃを探してる人がいる。


「ダ…ダメだよ。しぃは過去の記憶がない。ね、もしかしたら恋人がいるかもしれないし。あ…、け、結婚してるかも。こ、子供だっているかも。アラブの大富豪の孫かもしれないし、国家機密を知ってるスパイかも。あ、それで消されて海に捨てられたとか。そう。結婚なんて出来ないんだよ。記憶が戻らないと。でも、そうなったら、あたしたちの関係も終わっちゃうね。アハハ。関係って言っても何もないんだけど。あ、店長とバイトか。ね?」


言いながら涙が溢れてくるのはどうして?
泣くようなとこじゃないよね。


「雫が泣くなら記憶なんてどうでもいいよ。過去なんて所詮、過去だろ?今までかかって何にも思い出せないなら、きっとこれからも思い出せないよ。僕は思い出さない。僕はここで、雫と一緒にいる」


涙が止まらない。
あたし、しぃが好きだったんだ。
いつの間にか。いつの間にか…。