彼は人魚姫!

「だって…、ほら、あの…、あれよ。あれじゃない。ほら、しぃはうちの看板娘だから。エヘヘ…」


黙ったまま、薫がまたキッと睨む。
何でだろ。
困った時ほど笑ってごまかしたくなる。
決して不真面目な気持ちじゃないのに。


「あ…あぁ、そっか。そっか。しぃはオトコだもんね。『看板娘』はおかしいよね。『看板息子』か。ね?あ…、でもあたしが『息子』って言うと変だよね。アハハ…」


どんどん、どつぼにハマってる気がする。


「何がおかしい?さっきから『しぃ』『しぃ』って馴れ馴れしいんだよ。うちの…とか。本気で惚れたのか?お前…あんなやつに…」


いつもより大きく見開いた目。
マジで怒ってる。どうしよう。
否定すればいいのに、否定出来ない。
こういう時に上手にウソをつけたら楽なんだろうな。
とりあえずのウソ。自分を守る為の時間稼ぎが出来たら。


「ごめん。ふざけてるつもりはなくて。その…、ごめん。正直に言う。あの…ね、自分の気持ちがよく分からないの。はっきりしない。誰が好きなのかも」


言っちゃったよ…。