「バ、バカ。違うわよ。そういうんじゃない!」


見透かされたのかと思った。


「素直じゃないとこもカワイイよ。はい。サンドイッチ、作っといたから。紅茶は悪いけど自分で淹れて」


しぃお手製のハムサンドが、白い皿に六個並んでいる。
この目が回るような忙しさの中、いったいいつ作ったんだろ。
あたしの為に。
たまに見せるこんな優しさが心を揺らして行く。


「でも…」


店長のあたしがしぃ一人に店を任せて昼ごはんだなんて。
図々し過ぎる。


「ママ、顔色が悪いんだよ。やっぱり今日はお店、休みにした方が良かった。僕が開けようって言ったから…。だから、お詫びだよ。先に休憩取って」


軽く右目でウインクしてみせる。
何?このアイドル並みの爽やかさは。
一瞬、目を丸くしてドキッとする。
これ以上ここにいたら、邪魔になるだけ。
『じゃあ…お言葉に甘えて。ごめんね。ありがとう』と言うと、まだ忙しい店内をチラッと見て奥に引っ込んだ。