彼は人魚姫!




~そして、また1人…~



「いらっしゃいませ」


店のドアが開く度に、あたしは出来るだけ自然な笑みでお客さまを迎え入れる。
それは、大事な友達を初めて自分の家に招待する時の気持ちに似ている。
お客さまには最高に美味しい紅茶と、心が癒やされる空間と、………素敵なイケメンでくつろいで欲しい。


何で?何でだ?
イケメンって必要か?
ここは、紅茶とゆっくりと時間を過ごす空間を提供する場所。
それが…何だ?
この光景は。



しぃを拾って1ヵ月が過ぎた。
店の外には相変わらずの行列。
いつの間にかお客さまの間で、『彼がテーブルに紅茶を運んで来てくれたら、サッサと飲んで店を出る』という暗黙のルールが出来上がっていた。
紅茶の味も香りも関係ない。
しぃの淹れる紅茶は香りが良く、ストレートで飲んでもすっきりとした中にまろやかな甘味を感じるとても美味しいものだ。
なのに皆、『美味しい』とは言うものの、紅茶よりしぃが目当てなので店内はしぃを観賞する為の空間。
以前とは違う賑やかな店になっている。