彼は人魚姫!

「店、空けて大丈夫なのか?」


太陽の下の薫って、めちゃくちゃカッコイイかも。
笑顔がまぶし過ぎる。


「大丈夫。全然、大丈夫。しぃがいるから」


「しぃ?」


「あぁ…、あいつの事ね。お客さん、みんな、あいつが目当てなの。…イケメンって、匂うのかなぁ。あっちこっちから人が寄って来てさ。有り難いよね。売り上げは上がるし楽も出来る。あぁ~楽。楽。あいつのバイト代も余裕で出ちゃう」


そう。
楽が出来て有り難い。
そうだよ。
喜ばなきゃ…。
でも、胸の奥がモヤモヤするのはどうして?


「お前、ほんとにそれでいいのか?あの店はお前の店だろ?カップだって、お前が選びに選んで…。紅茶を淹れるのだって、勉強して研究してさ。こだわりを持って、やってた店だろ?それをあんな…どこの馬の骨か分からないやつに任せていいのか?」


薫が怒っている。
言われてる通り。
あたしは何をやってるんだ?
お客さんが喜べば、何だっていい?
あの店はメイドカフェじゃない。