彼は人魚姫!

「照れてません。しぃって呼んで欲しいなら、ちゃんと説明して」


必死に平静を装うけど、紅茶を淹れるその長い手の指にまた目が釘付けになる。
こいつ、手まで綺麗…
って…


「あー!なんで、あんたが紅茶淹れてるの!?」


つい大きな声が出た。
…今頃、気付くのもどうかと思うけど。


「お客さんが注文したから」


そうでしょうよ。
そりゃ、そうでしょう。
ボランティアでおもてなしされたんじゃ、破産だわ。


「勝手な事しないで!あたしは遊びでこの仕事、やってるんじゃないのよ。たかが紅茶かもしれないけど、あたしは丁寧に心を込めて淹れてるの。…しぃはちゃんと紅茶、淹れた事があるの?」


また興奮してしまった。
これでも、この仕事に誇りを持ってやっている。
美味しい紅茶を淹れる事では誰にも負けないと思ってる。
それを、こんなただ、顔がいいだけのオトコが…。


自分の領域を冒された事に対して怒っている。
…と思いたい。