彼は人魚姫!

細めだけど、ほどよく筋肉がついている腕が、後ろからあたしを抱きしめた。
包み込むように、優しく…強く。


「ママ、いい匂いだね」


きっと、ここで押し倒されたら、あたしの力なんて無に等しい。
口調は優しいんだけど、その腕から男の力の強さが伝わって来る。


「び…びっくりするでしょ?離して」


「このまま押し倒したら…どうする?」


な、何を言い出す!?
あたしの心を読まれた?
って、そんな事を言ってる場合じゃない。
あたし…行きずりの男に奪われるなんて…。
でも、イケメンだし。
いや、ダメだって!
こういう事は愛がないと!
ヤったあと、捨てられるんだ。
欲望を満たすだけのそういう…行為は、絶対に嫌!
怖い…。


「なぁんて。ね。ママを抱きしめたら、ちょっとモヤモヤしちゃったよ。だって、僕の理想の大きさだったから。僕の手がちょうど包み込める…」


あたしが飛びのいてこいつをひっぱたくのに、さほど時間はかからなかった。