彼は人魚姫!


「大丈夫か?」


店に戻ったあたしに薫が心配そうに聞く。


「あっ、大丈夫。大丈夫。あいつ、寝てるよ。疲れてるのかもしれないし、取りあえずこのまま寝かせておく」


「このままって。お前のベッドに寝てるんだろ?嫌じゃないのか?普通、嫌だろ?」


薫…めっちゃ怒ってるし。
でも、大して嫌な気はしない。


「すぐに起きるって。そんな事より、配達があるんじゃないの?美人の奥様たちが待ってるわよ」


近くのレストランやスーパーに卸したあと、契約している個人の家に配達に行く。
イケメンなのに、肉体労働しているところがギャップがあっていいのかもしれない。
モテるもんなぁ。薫。


「そうだ。ゆっくりしてらんねぇ。…美味かった。ごちそうさま。また後で来る。絶対、来る。あいつが起きたら、警察に連れてけ。いいな?必ず、だぞ。何かあったら電話しろ。いいな?…返事は?」


ほんとに。
アンタは彼氏か?って。
あたしは「はいはい」と面倒くさそうに言いながら、薫を見送った。
そろそろ準備するか…。


「きゃあ!!」