彼は人魚姫!



「はい。ちょっとこれに着替えて。奥に部屋があるからそこで。タオルはその辺に置いといて」


店に戻ると、そっぽを向いてる薫を気にしつつ、あたしはすっぽんぽんヤロウを奥に押し込む。


「どういう事だよ。説明しろよ」


いつもより態度が悪いぞ。
いつから、あたしの彼氏になったんだ?
ちょっと気に入らないけど、ちょっと…嬉しかったりもする。


「あいつは…ほんとにさっき会ったばっかり。海辺に倒れてたのよ。あの格好で」


「普通、警察に連れて行くだろ?」


明らかに、怒ってる口調。
薫はあたしより2コ上の25歳。
身長172センチ、ちょっと上がり気味の大きな二重の目。
髪は長めでゆるいウェ~ブ。
こいつもかなりのイケメンで、昔からファンクラブがあったほど。
このカフェのすぐ隣の畑で野菜を作ってて、立派な農業青年。
トマトも完熟でとっても美味しくて、定期的に買わせてもらってる。
残念な事にうちのカフェでは料理は出さないから、もっぱら自分用。
薫目当てのお客さんも多いらしい。