~温もりは……~


朝の風はもう、とっくに冷たい。
昼間はまだ少し陽が差せば暖かくも感じるけど。
空を見上げると、青が薄い。
それが余計に寒さを感じさせるのかもしれない。
長い、慣れた坂道をゆっくりと下りて行く。
いつからかな?
何かを期待して、諦めて、ここを歩いて行く。


「寒い……」


すれ違う女子高生が手袋をしてるのを見て、また冬が来たんだと分かった。


あれから。
1年が経ったんだ。
しぃがいなくなって、1年。
あの日、気持ちを確かめあって。
その次の日の朝に、何も言わず、しぃはいなくなった。
あまりにも突然で泣くことさえ出来なかった。
しぃはキツネかタヌキだったのかもしれない。
その存在自体、分からなくなってしまった。
薫は海堂グループの家くらい、すぐに分かるから会いに行けってずいぶん怒ってたけど、あたしには出来ない。
しぃはあたしを置いて行ってしまったんだから。