彼は人魚姫!

「仲のいい両親。一人っ子。生まれてから一度も彼氏ナシ。経験ナシ。以上」


『そ、それだけ?』大体知ってるって、これだけ?
思わず口が開いたままになる。


「そうだよ。それだけ知ってれば十分でしょ?あとはママを見ればいい。ママは完璧。可愛くてたまらない。いつも触れていたい」


もう……。どうやったらそんな歯の浮くような台詞が言えるのか。
可愛いとか普段言われないから嬉しいけど、めちゃくちゃ恥ずかしい。
きっと結婚しても『愛してるよ』って言ってくれるタイプなんだろうな。


「それだけであたしを信用してるの?もしかしたらお金がめちゃくちゃ好きかもよ。会社、継いじゃえば?って言うかもよ」


わざと意地悪を言う。
無意識に試してるのかな?
嫌なオンナだなぁ。
嫌われたらどうするの?


「ママがそう言うならそうする。ママが側にいてくれるなら、何でも出来そうな気がして来たんだ。写真も好きだよ。もちろんやりたい。ずっと撮って行く。でも、ここに来て考えが少しずつ変わって来たんだ。何もひとつの事に固執する事はないなって。生きて行くには働かないといけない。写真だけじゃ僕なんて食べて行けない。それってママを幸せに出来ない事かもしれない。与えてもらえる仕事があるなら一から頑張るのもいいかもしれない。逃げてばかりじゃなく」