彼は人魚姫!

「あ、あのさ、しぃって、あたしの事、知ってるの?どれくらい知ってる?」


好きだの、結婚したいだの言ってくれるのは嬉しいけど、そもそも、しぃはあたしを知ってる?


「ごめん。大体は知ってる。つもり」


「あ、そっか。そうだよね。しぃの家ってお金持ちだったもんね。あ、嫌味にとらないで。ね、あたしごときを調べるなんてライバル会社を調べるより簡単だよね」


嫌味のつもりは全くない。
ほんとにそう思った。


「ライバル会社って。ママ、妄想がひどいよ。どこに話が飛ぶんだか。僕には何の力もないし好きな人を探すのに父親の力を使ったりしない」


ちょっと怒った顔をして、大きな目をもっと大きくして見つめてくる。
本気で話してる。


「自分で調べた。ママの事、知りたくて必死だった。あの時に会ったあの場所で。ずっとママを見てた。そう、時には親戚のお兄さんになり、時には幼い頃に生き別れた兄になり……」


「あぁ!思い出した!中学や高校の頃、変な噂があったのよ。あたしの家庭が複雑だって。平凡な一般家庭なのに」