「外は寒かったでしょ?今、紅茶淹れてあげる」
『うん』と小さな声で返事すると、そのまましぃの部屋に入った。
ほんとはお金持ちのおぼっちゃんなのに。
こんな小さな部屋に押し込まれて。
そう、カメラ。写真だって撮りたいはず。
ここは景色もいいし。
そっか、しぃはここで色んな事を我慢してきたんだ。
「寒い?」
「ううん。大丈夫」
なんとなく、あたしがぎこちない。
ドキドキして落ち着かない。
『はい』と差し出されたマグカップ。
あたしが買ったお揃いの四つ葉のクローバーの。
「あぁ、このマグカップ、ないと思ったんだ。なんでここにあるの?」
「ママとお茶を飲む為に僕が仕舞ってた。この日の為に」
甘いアールグレイの香りが部屋中に立ちこめる。
「そ、そうだったんだ」
急いでカップに口をつける。
「あちっ!」
「相変わらず、あわてんぼさんなんだから」
大きな目が優しくあたしを包んでる。

