彼は人魚姫!

「一度だけ」


オーナーはいきなりあたしを抱きしめた。
体は一瞬で固まって動けない。
このとんでもなく大きな鼓動、聞こえてるかもしれない。
あたしがオーナーに惹かれてる事もバレてる?
このまま大きな波にさらわれて、どこか知らない所にでも行けたら。
そう思うって事は、やっぱりオーナーが好きなの?
どうなの?あたし。


「こうしたいってずっと思ってた」


少し強く、存在を確かめるように抱きしめてる。
何も抵抗出来ない。
そればかりか、両手が動こうとしている。
オーナーの背中を探り始める。
気持ちのブレーキが効かない。
髪を撫でないで。
心が持って行かれてしまう。
心臓は今にも破裂しそう。


「ありがとう」


もう少しであたしの両手が大きな背中を包むところだった。