彼は人魚姫！

「初めまして」


な、何？こいつ…。
ニッコリ笑って、薫に握手を求めてるよ。
いったい、何を考えているのか。
いや、こいつは何も考えていない。
ただ、自分の今の状況は考えず、人として『挨拶』をしてるんだ。
………。
格好を見ろよ…。
状況を見ろよ…。
空気を読めよ…。


予想外の行動に薫は一瞬、たじろいだが、すぐに差し出された右手を払いのけた。
どうやら友好関係を結びたくないらしい。
が、こいつも負けてなかった。
払いのけられた右手が、またサッと伸びて今度は確実に薫の右手を掴んだ。


「よろしくね」


微笑みながら、やつが握る。
薫の顔が歪んで、『痛っ！』っと小声が漏れたのは、聞き間違いじゃないだろう。
こいつ、いったい、何者？


「ママは僕のものだからね」


薫の耳元に顔を近付けて、やつが何かを言ってるのだけは分かった。