彼は人魚姫!

このまま、抱きしめていて欲しいと思うのはいけない事なのかもしれない。
何か言えば、この腕がするりとほどけそうで怖い。
あたしの背中がオーナーの体を感じてる。
全神経が背中に集中する。
もし、このまま連れ去られても、きっとそれでいいと思ってしまう。
オーナーの優しいウソが心の鍵を外してしまった。
でも、きっと、何も始まらない。
ここで始まって、ここで終わる。
一歩も動けないまま。


「風は、ずっと雫さんを探してた。あいつも一目惚れだったんだ。勝手に運命の人だと思って必死に探して。会えない分、想いは募って行ったみたいだな。そして、見つけたんだ。1年後」


「1年後?私と会ったのは……」


振り返ったあたしの背中からオーナーの腕がほどけた。
きっともう、体がくっつく事はない。


「風はずっと雫さんを見て来た。こっそり、隠れて見てたらしい。ストーカーだよな。でも、あいつ、かなりの奥手で。女の子が苦手だったんだ」


奥手?女の子が苦手?
今のは聞き間違い?