彼は人魚姫!

「え?もしかして、あの、海堂石油とか海堂銀行とか、海堂航空とか?海堂がつくやつの事?」


「だからさっき言ったでしょ」


体中の力が抜けて行く。
おぼっちゃんじゃないの?
あたしが相手に出来る人じゃない。
住んでる世界が違う。
セレブ中のセレブ。
どこまで騙したら気が済むの?


「そんな言い方。大した事ないですよ。すごいのは先代たちで。僕らは何もしてないですから」


オーナーの声は耳に心地よい。
だけど今は、全てに興奮している今は、その声さえもざわざわと心に波を立てる。
くるくると頭が回り出す。
体が後ろにフワーッと、倒れた。


「雫さん!」


もう、このまま、ずっと気を失っていたい。
何も聞きたくないし、見たくもない。
いっぺんに色んな事が起きて、頭と心が処理しきれない。
寝かせて下さい………。


「もう、ママは繊細なんだから」


倒れかけた体を強い腕が抱き止めた。


「しぃ………。どこ触ってんの?」


失いかけた頭をしっかりと目覚めさせてくれるやつ。
ねぇ、その、さりげなく掴んでるのって、わざとよね?
胸をがっちり掴まなくても抱き止められると思うんだけど。