~優しい色~
「ママ、この坂、上るの?」
「そうよ」
「横向いて歩いたら、丸見えだね」
「…!?」
しまった…。
板を持ったまま、前には歩きにくい。
風の抵抗があった。
これじゃ、カニさん歩きしか出来ないじゃないの。
「あ…、ちょい斜め?まぁ、その辺は上手く隠して。あ…」
って言ってたら、マジで上から人が来たし。
ヤバイ!
「あ…、あともうちょっとだから。頑張って運んでね。いやぁ、ホント助かっちゃった。あたし1人じゃ、持てないもんね。でもそのせいでシャツ、汚しちゃってごめんね。短パンだけになっちゃって。人が見たら怪しいよねぇ~。アハハ…」
あたしの話が聞こえてるのかいないのか、その、犬の散歩をしている中年の男性はチラッとあたしたちを見ただけで通り過ぎた。
あたしも…よくも咄嗟にこれだけの嘘が出て来たものだ。
嘘をつくって、自分を守る為の本能なのかも。
「ママの嘘ってカワイイね」
「うるさい。早く。今のうちに、人が来ないうちに急ぐわよ」
少し長い坂道を、アイドルみたいなイケメンが腰にピンクのタオルを巻いて、それを隠すように板を抱えて上ってく。
なんておかしな光景。
でも、どんな格好をしてもカッコイイやつはカッコイイのだ。
『彼女…いるのかな?』
ふと、気になってしまったりして。

