彼は人魚姫!


「はい。これ持って。板を体の前後に置いて。で、右手と左手で…こうやって…1枚ずつ持つ。そう。これでよし」


あたしは取りあえず、こいつのその…見えちゃイケナイとこを隠そうと思った。
いくらなんでも、タオル1枚だけで道を歩いてるやつはいない。
お巡りさんに出くわしたら、絶対、職務質問される。
そしたら…めっちゃ厄介。
って、このスタイルがOKかどうかは難しいとこで。
でも、一応、『板』を運んでるっていう設定を作ってみた。
見えてないけど、一応、短パンも穿いてる設定…。
こうなりゃ思い込みだよ。
自信を持って行動すれば、挙動不審にも、不審者にも見られまい。
そう自分に言い聞かせる。


「ママ、持ちにくい」


「いいから。我満して。おいしい紅茶、飲ませてあげるから」


サンダルも早く何とかしたいと思いながら、あたしは早足で山手の方へ向かった。