彼は人魚姫!

「痛いよ。ママ」


「え?」


頬を押さえながらウルッとした瞳で振り返るしぃに、思わず半歩、近寄った。


「あっ!」


「相変わらず、甘ちゃんだよね。だから利用されるんだよ。まぁ、僕にとっては都合が良かった訳だけど」


掴まれた右手は振りほどけそうもない。
男の力の凄さをまた感じる。
『怖い』と心から思った。
『う…るさい』と何とか声を発したが、小さ過ぎて誰にも聞こえないだろう。
もう終わりだ。あたしの中の弱い声がした。


その時、体を誰かに突き飛ばされた。
んだと思う。気付けば草の上に尻もちをついていた。
そして前を見ると、しぃがよろけている。


「な…、何?」


混乱する頭を急いで落ち着かせる。
あぁ、水が飲みたい。


「薫!」


あたしの視界にしっかり陣取っているのは、薫。
仁王立ちになって、あたしの前に立ちはだかっている。
まるで漫画の騎士のように。