そういえば、しぃにあたしが遅くに出歩いてた事、バレてなかった。
以外と気付かれないものなんだ。
やっぱり、しぃ、疲れてる?
色んな事を考えながら身支度を整え、店の方へと急ぐ。
朝はいつも店のキッチンで軽く済ませる。
今までは一人で新聞を読みながら紅茶を飲むだけだった。
でも今は違う。しぃと二人で過ごす楽しい時間。
寝ぼけ眼のしぃと、たいした会話はない。
ただ、少しはねた髪とクリクリした大きな瞳があたしを見てるだけでいい。
なんか可愛くて、なんかいい。
ごくごく普通の日常が、楽しい。
そんな事に、最近気付いた。
この朝があるから毎日が幸せ。


「しぃ、おはよう。遅くなってごめんね」


慌てて中に入る。
お腹を空かせたしぃがぐったりとカウンターにつっぷしてるに違いない。


「えっ?」


しぃがいない。
誰もいない店内をぐるっと見渡す。
隠れてる訳ないか。
まだ寝てる?訳ないか。
さっき、しぃの部屋を見た時には確かにいなかった。
あいつはいつも襖を開けっ放しだから、居るかどうかはすぐ分かる。