彼は人魚姫!

「あ、ご、ごめん。驚かさないようにしたつもりだったんだけど。驚くよね?」


暗闇に馴染んで来た目が、外灯の灯りに焦点を合わせてその下の人物を映し出した。
忘れる訳ない。ちょっとときめいた人だもん。
ほら、そのうつむきがちに笑うとこ、心臓わしづかみ。


「いえ。あたしの方こそすみません。大きな声、出して。あの…、こんな時間にこんな所でどうしたんですか?」


さりげなく髪を触って整える。
ぐちゃぐちゃじゃないかなぁ。恥ずかしい。
ヤバイなぁ。オーナーに会えるって分かってたら…、じゃなくて!
もっと大変!スッピンだよ!スッピン!
私にとって大切なアイラインもマスカラもしてない…よ。
最悪だ…。
うぅ…、オーナー、近眼ってことはないかな?
思わず前髪を引っ張って顔を隠そうとする。
隠れる訳ない。どんだけ顔、ちっさいんだ?


「あぁ、用事でこの近くのホテルに泊まってて。なんだか寝付けないからちょっと散歩をね。雫さんも散歩?」


黒いTシャツに白いジャケット。
タンクトップかもしれないけど。
カッコイイジーンズ姿に見とれる。
前に見たスーツ姿とはまた違う。
何だろ?この人、色気がある。