まるで金縛りにあったかのように、宮殿を見たまま動かない。

少し違うカルサの雰囲気に、勿論リュナは気付いていた。

「どうしよう、緊張して足が進まない。」

リュナはそう言いながら、心臓をさすって落ち着かせようとした。

深呼吸を何度も繰り返し、苦笑いを見せる。

それは彼女らしくない行動で違和感を覚えたが、カルサはそうかと軽く流した。

ここまで来て足が進まないと言っている場合ではないな。

自分にそう言い聞かせて短く息を吐く。

「行くか。」

「はい。」

リュナは笑顔で答えた。

歩き始めて気付いたのは、宮に続く道路が不思議な力に包まれていること。

まるで手招きされているような、背中を押されているような、くすぐったい感覚に心は和む。

それ以前に総本山自体が優しい力で守られているようだった。

しばらく歩いた先に宮殿に入る門が見えてくる。

木製の背の高い大きな門、その造りは豪華なものだった。