「ここか…夢に出てた場所。」

誰もいない決して小さくはない洞窟に一人の青年の声が響く。

肩に耳も尾も長い小動物が乗せている青年は、まだ幼さが残る声でだいたいの年令を推定させた。

靴音が響く。

雫が水溜まりに落ちる音も響く。

彼は肩に掛けていたカバンを下ろし湖の前で屈んだ。

地に手をついて覗き込むと、どこまでも透明な水が彼を迎え入れる。

その透明度の高さに身震いがした。

吸い込まれそうで怖い、青年は勢いよく身体を起こすと深呼吸をして落ち着こうと試みる。

「はあ…怖い。」

小さく漏らした本音に肩に乗ったままの小動物は笑った。

ここは聖域と呼ばれる場所。

この薄暗い洞窟で唯一光が差し込むのがこの湖、その景色は聖域と呼ぶに相応しいほど神秘的だ。

「本当にここなのかな?」

なんとなくの確信はあったが自信はない。

辺りを見回しても青年の声に答えてくれそうな人間はいなかった。