さっきまでの事がまるで嘘のように穏やかな空気。

さっきまでの事がまるで夢のように、そこにはもう何もない。

だがこれは現実だ。

たった今、嵐の中から侵入者が現れカルサとリュナを奪っていった。

彼らはここにはいない。

恐れていた事態が今現実に起こっているのだ。

まるで予言のようにカルサが残していった言葉が頭の中で反響する。

自分にもしものことがあればと、そう言ったカルサに今する話ではないと突き返そうとしたのだ。

あの時カルサは何かを予感していたのだろうか。

この嵐の中で蠢いていた何かに危機を感じていたのだろうか。

あの場であんな発言をするなんてカルサらしくないと、もっと汲んでやればよかったのではないか。

自分にはそれが出来たのではないか。

今更考えても仕方がないのに考えずにはいられない。

悔しさと苛立ちとふがいなさで、サルスは思わず片手で顔を被った。

もう片方は強く握り締められている。