彼を侮っていた訳ではないが、分が悪くなったのを感じる。

「気にならないようにしてやろう。」

ヴィアルアイが不気味な笑みを浮かべると、カルサは一瞬にして壁に叩きつけられていた。

「ぐわぁっ!」

鈍く重い音と共にカルサの背後で壁がぼろぼろと崩れ落ちていくのが見える。

こんな彼の姿を誰も見たことがなかった。

カルサのこんな戦いを見たことがなかったのだ。

「陛下!!」

膝から崩れていくカルサの視界にはリュナに斬りかかるヴィアルアイの姿が映っている。

それはとてもゆっくりで、これから残酷な場面を見せつけられる序章のようにも思えて全身が震える。

頭の中の警戒音が悲鳴のように反響し、その音で自分が壊れてしまいそうだ。

「ラファルーッ!!」

全身全霊で叫び出した声と共に、右手に力を込めヴィアルアイに向けて振り降ろした。

「リュナさんっ!」

死を覚悟した兵士は反射的にリュナに覆いかぶさる。