軽くなった足取りで離れてしまった持ち場に戻る、急ぎ足でその場から立ち去っていった。

どうやっても顔が緩んでしまう、それほどカルサはハワードの頼もしさが嬉しかったのだ。

「あの…風神さまは?」

立ち去ったカルサの背中を目で追うハワードに声がかかった。

声をかけたのは幼子を抱えた女性、見るからに優しそうな雰囲気を感じ取れる。

おそらく今までのやり取りから風神のことを気にしたのだろう。

責めの追求よりも、案じた心配の方が強く感じられた。

「懸命に働いておられる。」

多くは語らずそれだけで頷く。

それが余計に響いたのか女性は安堵の笑みを浮かべ頭を下げた。

本当は嵐を止めようとして力を使い果たしたなんて言える訳がない。

リュナのことはハワードの耳にも入っていた。

「ハワード様。」

なかなか動き出さない老大臣を促す声がする。

「いま行く。」

ハワードもまた急ぎ足で民の部屋を後にした。