「最初は恵みの雨と民も喜んでいたのですが、こう続くと川の氾濫や土砂災害が心配との声が多く上がっています。」

会議室ではカルサを筆頭に大臣、秘書官、軍隊長などが集まっていた。

現状の報告を受けて誰もが険しい顔を隠しきれないでいる。

このシードゥルサに長く降り続ける雨は止むことを知らず、まるでこの国の全てを洗い流すかのように注がれていた。

それは不吉な予感の表れとして囁かれるようにもなってきている。

手元に配られた資料にカルサは目を通していた。

地形によっては被害が計り知れないところもある。

無表情のまま顔色一つ変えないが、心中は会議の参加者同様にとても険しいことは明白だ。

話し合いの声を聞きながら資料と向き合い最善の対処を頭の中で考えていた。

誰をどこにあてればうまくいくかも見極めなければいけない。

一刻の猶予もない状態だが即決するには危険な気がしてカルサは口を開けずにいた。

ああでもない、こうでもない、どこから始めたらいいのかさえもまとまりそうにない。

皆が皆、自分の管轄を一番に考えるのは仕方のないことだった。