【葵】
葉月と話をした日から、私は南とちゃんと話をするように努力をした。
逃げずに、ちゃんと目を見て…。
「……っ!」
でも顔を見るのは五秒が限界。
そんなドキドキの学校生活を送っている9月の下旬…。
いつものように五時間目のHRが始まった時だった。
「みんな、静かにー」
学級委員長と書記が黒板の前に出てきて、賑やかな皆を沈めた。
一体何が始まるのやら…。
「えーと、今日は10月の中旬にある、文化祭のクラスの出し物を何にするか決めようと思います」
「「「文化祭!?」」」
みんなが声を揃えて言う。
あぁ、そういえばそろそろどこの学校も文化祭の時期か…。
私たちの学校には体育祭というものがない。
だから文化祭は悔いのないように精一杯楽しむんだ〜って、どっかの先輩に聞いたような…。
「それで、皆は何がしたいですか?」
「はいはーい。
お化け屋敷とかどう?」
「え〜、だったら喫茶店がいい〜」
「メイド喫茶とか?」
「えぇ〜」
みんなそれぞれ意見を言い合って、話が上手くまとまらない。
「あーもう!
じゃぁ多数決取ろう。
お化け屋敷がいい人ー」
…1人。
「喫茶店がいい人ー」
6人。
「メイド喫茶がいい人ー」
10人。
しかも手を挙げてるのはみんな男子だ。
「最後。
執事喫茶がいい人ー」
…10人。
これは女子が多いけど、何人か男子も挙げてる。
「てことでー、メイドと執事が同数な訳なんだが…。どうする?」
「どうするって…なぁ?」
「う〜ん」
「…合体させたら?」
誰かがそんなことを言った。
「合体?
あ、いいかもそれ!」
「うん、楽しそう!」
みんなキャァキャァと盛り上がる。
どうやら合体することに反対派の人はいないようだ。
チラッと琉衣の方を見てみる。
琉衣は私の視線に気づいたのか、こっちを向いてウィンクしてみせた。
やっぱり、さっきの声は琉衣だったんだ…。
「ねぇ、せっかく合体するんなら、男女逆にしない?」
「どういうこと?」
「つまり、男子がメイド服で、女子が執事の格好するの。
面白そうじゃない!?」
「わー、いいね、それ!」
「でしょ!」
「おい待て!
そんなん俺たちは嫌だ!」
「何で?」
「男がスカートとか、キモイだろ!」
「…普通ならね。
けどこれは笑いを求めてるからいいんじゃない?」
「女子って結構酷いな!」
ハハハとみんなの笑い声が教室にひびいた。
私が琉衣に目をやっている間に話は結構進んでいた。
「まぁという訳で一応このクラスは男女逆転のメイド&執事喫茶に決まりだ」
「「わー!」」
パチパチという拍手とみんなの歓声の音が聞こえてくる。
いつの間にか知らず知らずの内に、私たちの文化祭の出し物は決まったようです。



