あれから春が過ぎ、夏がやって来た。
「あぢー」
日がカンカンに照り、後5日で夏休み。
「南、朝からアイス食べるとお腹壊すよ?」
「いいんだよ、暑いんだから」
「もー、壊しても知らないよ?」
「大丈夫だって。
壊したら壊したで、保健室行くからさ」
「今日保険の先生居ないって聞いたけど…」
「ん?
何か言ったか?」
「何も?」
ボソッと呟いた言葉は南に聞こえていなかった。
「あ、南、葵、おはよう」
「おはよう、葉月」
先に学校に来ていた葉月に挨拶をする。
葉月は春の後半ぐらいに弓道部に入った。
今日は朝練があったらしい。
「朝練終わり?」
「あぁ」
「そっか、おつかれさま」
「ありがとう。
教室一緒に行っていいか?」
「もちろん」
葉月と合流して3人で玄関に行く。
私が靴を脱いで、下駄箱に入れようとフタを開けた時、1通の手紙が入っていた。
「…何だろう、これ?」
「「ん?」」
手に取ってみた手紙を二人も横から覗く。
「まさかラブレターだったりしてな…」
「まさか〜」
葉月が冗談混じりに言って笑う。
それに私もはははと笑って手紙の中身を取り出した。
「あ……」
声を上げたのは南だった。
『初めて会った時から東月さんのことが好きです。
今日の放課後、5時に屋上で待ってます
山田千太郎』
…本当にラブレターだった…。
「おいおい、マジかよ…」
南も葉月も予想外のことで驚いていた。
「ど、どうしよ…!?」
「まぁ落ち着けって。
葵、この差出人の名前知ってるのか?」
「ううん、知らない…」
「てことは、他のクラスの奴か、先輩だな…」
確かに、知らないとなればそういうことになる。
けど私、他のクラスにも先輩にも、そんな仲の良い人なんていないんだけどな…。
っていうか、何かさっきから南が冷静…。
どっちかって言うと、こういうのは葉月の方が冷静に判断すると思うんだけど…。
まぁ、葉月も案の定冷静だけど…。
「とりあえず放課後屋上行ってみるよ」
「…1人で大丈夫か?」
「うん。
南と葉月は教室で待ってて」
「「わかった」」
二人は心配そうな顔をしながら頷いて、階段を上がり始めた。
私もその後ろを付いて行く。
…大丈夫。
きっと大丈夫…。



