美鈴達が居る前川邸には珍しい声に斎藤、美鈴、寝ころんでいる永倉さえも起き上がり声のする方に目を向ける。




「なっ!?なんだよぅ!!やる気か?」




今にも折れそうな木の棒を手にとって子犬が喚く様に斎藤と永倉に牙をむける。




今の時代では貧しいとは言えない小ざっぱりとした若苗色の子供の着物を身に纏い、少し茶色がかった短髪の少年。




そして、さっきから喋りまくっているこの子犬クンの後ろには子犬クンよりは年上そうな男の子が気まずそうに立っていた。




子犬の様な瞳が子犬クンと似ている事から、きっと子犬クンの兄だろう。




美鈴「為三郎(タメサブロウ)君に勇(ユウ)坊っ!違うよ誤解だから!」




勇坊、もとい子犬クンと為三郎、勇坊の兄に美鈴は斎藤の元から離れ、誤解を解くために話す。




勇坊「だってさぁ…」



為三郎「スミマセン美鈴さんっ…」



勇坊の方は少し不服そうだが美鈴が宥めたと言うこともあり、大人しくなった。




そんな美鈴と勇坊と為三郎の会話を聞いて、永倉は首を傾げる。





永倉「ありゃ?美鈴って二人と知り合いだったけか」




永倉は美鈴が何故この二人の事を知っているかが疑問だったらしい。





それもそのはず。









為三郎と勇坊は芹沢一派が屯所としている八木邸の息子達だ。





新見が居なくなりあまり芹沢一派の方へ行かなくなった美鈴が何故知り合いになったのかと誰もが思うだろう。




その問いに美鈴は記憶を手繰り寄せるように言葉を紡いだ。





美鈴「えっとですね…」