物陰で隠れていた何者かが、小さく声を漏らした。
「あ。捕まちゃった。どうしようかな…」
さほど困った様なこともない言葉を呟き、長い爪でポリポリと頬を掻く。
「ォオーン」
小さく吠えると、多摩がフルフルと体を震わせる。
ピ…ピキッ……
「?!」
二人は驚き、変貌していく様を見つめた。
「ダメだ! 生鬼になる!」
発動間際の矢の形成をやめ、急いで印を結んで新たな符呪を唱え始めるが、変化していくスピードが早すぎて間に合わない。
「が…あああああっ!!」
異形の姿に変わり果てた多摩を見て、2人は息を飲んだ。
四本の紅い角を生やし、鋭い牙が剥き出しになり、長い爪をその長い舌で舐めると同時に、二人の前から姿を消した。
『!?』
「づああっ!!」
隣にいた龍二が悲痛の声をあげた。
見れば生鬼になった多摩に腕を噛みつかれていた。
「縛!」
遥がとっさに発したが、その言葉は龍二を捕らえてしまった。
(なんて速さだ!)
クルリと回転を加えながら地に降り立つ生鬼。
壊れたような、気味の悪い笑顔をすると、口に付いた血を長い舌で拭った。

