その日は何事もなく学校が終わり、龍二は歩いて家へと帰し、遥はバイトへと向かった。
今日オープンのコンビニは、夕方のラッシュで混み合っていた。
店長がいないので、交代前のバイトの皆はあたふたして対応に追われている。
バックルームに急いで入ると、一瞬息をのんで警戒した。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。人間社会を脅かすほどの力なんか、持ち合わせてはいないから」
制服を着た刹那が微笑みながら言うが、昨日のこともあるので警戒心MAXだ。
「来るとは思わなかった」
「ふふっ。僕は、君と仲良くしたいだけだよ」
眼鏡の奥に潜む欲望をちらつかせながら近付き、遥は一瞬硬直した。
「怖がらないで。君のことを、知りたいだけなんだ」
優しく、甘く、愛の詞(うた)でも唄うかのように耳元で囁く。
心を惑わし、骨抜きにし、堕ちた所で相手を喰らう。
濃厚な蜜を、舐めあげるかのように。
「はっ…離れろ!」
高鳴る胸の音が聞こえるかと思うくらい、心臓が脈打つ。

