妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>



 日が暮れ、遥は机に突っ伏していた。
 その隣では、呆れた顔の緋音があごひじついて座っている。

「つ…疲れた…」

「ハァ。そりゃ疲れるわよ。かなりある数の部を叩きのめしたんだもん」

 呆れながら言うと、遥はホロホロ泣きながら訴えた。

「朱雀ねーさんが、来たらぶちのめせって言うんだもん。逆らえねぇっつの」

「す、朱雀さん。余計なことを…」

 朱雀の無茶な言葉に、緋音は頭を抱えた。

「とりあえず帰ろうぜ。俺このあとバイトの打ち合わせがあるんだ」

 伸びをしながら言うと、緋音は席を立つ。

「じゃああたしは歩いて帰るわ。早く行かないとダメでしょ?」

「まあそーだけど、大丈夫か?」

 心配そうに言うと、緋音はチッチッと指を振った。

「あたしを誰だと思ってんの?」

「失礼致しました。緋音サマ」


 遥が頭を下げながら言うと、二人は笑い出した。


 靴箱で別れ、遥は自転車置き場へと向かった。
 帰宅時間をかなり過ぎているだけあって、自転車はまばら。

 鍵を開けようとしたとき、生暖かな風が頬を撫でた。
 微量の妖気を纏って。

 瞬時に指を口元に当て、呪文の永唱に入ったが、何事も起こる気配もなく。

 だが、勘違いにしてはあまりに強く、背筋にねっとりと跡を残すような、そんな感じの妖気。

 何があってもいいように、緊張のアンテナを立てて帰路に着く。