――世界が壊れる前に、翔一が僕を壊してよ。


俺の手には手放すことの許されない黒い銃。
銃口が向く先は真司の胸。


俺が真司を殺す。



そうだ。
これは約束だ。

前から決めていたことだ。


だから、何も躊躇う必要はないわけで。
むしろ、俺は解放されることを喜ぶべきで。


でも真司を失えば、俺の居場所は無くなる。



「か、勝手なこと言うなよ!!お前は失わないかもしれないけどな、そんなん自己満足だろ!?」


右腕を引いても真司の力が強く、動かない。



このまま真司を殺す。

俺がこの手で。


そう考えると自然と震えていた。



真司は真っ直ぐ俺を見て微笑んでいる。



どうして?
何でそんな顔で笑ってるんだ!?



「さぁ、引き金を引いて。君の手で心臓を止めて。」



体の震えが止まらない。

銃を握る手が震える。


震え……………………?



そこで俺は気がついた。



「なんで………?」



俺の手を掴む真司の手が、



「何でお前が…………」



震えていた。



「震えてんだよ?」



俺は左手を真司の背に回し、気がつけば抱き締めていた。



真司が妙に脆く見えてしまって。


衝動的な行動だった。