一人で家に取り残された私もまた、訳もわからずにただ寂しさに怯えて泣いてばかりで一日を過ごした。
お腹が空く。
けれども母は兄を連れて出て行ったまま戻らない。
食事すら、用意されていない日もあった。
それを見かねた父方の祖母が、母のいない間に家を訪ねて来てくれた。
それなので私は、ほとんど祖母に育てられた様なものだった。
中学に上がってすぐに祖母を亡くした私は、益々孤独であった。
そうしてまた、益々母を憎むようになったのだ。
私には、祖母すらも母の無自覚に殺されてしまったのではないかと疑われた。
母は、父が出て行った事で、散々に祖母をも責めていたのだ。
母は、いつも自分の非の事は棚に上げていたから、もしくは自分を、何と図々しくも、完璧な人間と思い込んでいたから、責めるのはいつも兄以外の誰か他の人間であった。
「あなたが、可愛い娘でないから、父さん、出て行ったのよ」
母は、そんな風に冗談めかしたつもりで幼い私に言った事もあった。
子供にとって、それが決して冗談に値しないだろうという事も、母にはわからなかった。

