彼女は、紺色のAラインのコートに白いマフラーを首に巻いていた。 初めて見る姿だ。 いつも着ているベージュ色のコートよりも、ずっとかわいらしく可憐だ。 信号が青になって、フワリフワリと漂う様にこちらへと歩いて来る彼女。 僕に、気が付いているだろうか。 しばらく見守ってみる。 通りを渡りきる所で、彼女がフワリと笑った。 それに応える様に、僕も小さく手を上げる。 僕だけに向けられた、寒さで鼻の頭を赤くした彼女の笑顔。 ああ……いったいこの…… 羞恥にも似た新鮮な感覚は何だろう。