僕は工藤さんの言葉を聞きながら、ふと、昔の事を思い出していた。 仙台……? そうだ。 そう言えば僕には心当たりがある。 歩太はいつか、こんな事を言っていた。 『歩夢、君が田舎へ帰る時にでも、ぜひ一度一緒に仙台へ行かないか? そうだな、冬がいい。 風が凄く冷たくて、身体中の細胞が、すべて洗われるような、そんな気がするんだ』 コーヒーの湯気に目を細めて、そう言った歩太の綺麗な横顔を、僕は確かに見た。 「……ああ……」 そうだ。 それは確かに、僕の記憶の隅に残っている。