騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




今なら言える。

わたしが言いたいこと、全部。


聞きたいこと、全部聞ける気がする。




「どうした?麻菜?」


いつの間にか目の前に立っていた仲森さん。


頭上から昔と変わらない優しい声が落ちてきた。




「あ、あの……えっと……」

「うん?」



やっぱり面と向かうと、ドキドキして上手く話せない。


昔から上がり症だったけど、治ってないみたいだ。




「仲森さんは……」

「うん」

「恨んでますか?わたしのこと……」




カチ、カチ、と時を刻む音だけが聞こえてくる。