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次の日、私はサクと同じ時間に目が覚めた。

時間はまだまだ早いけど、今日は初出勤の日だから。


「じゃあ、先に行くけど本当に道は大丈夫?」

サクが玄関先で何度も私に確認する。


「大丈夫だよ。昨日地図は確認したし私、方向音痴じゃないから」


そもそもダメって言ったらサクは一緒にサンセットへ行ってくれるの?そのほうが鉄さんは喜ぶと思うけど……。


「そう?じゃあ行ってくるね。5時には帰ってくるから」

「うん。いってらっしゃい」

……バタン。ドアが閉まった瞬間、ふと我に返った。


なに今のやりとり?

いってらっしゃいなんて初めて言ったし、ってか新婚みたいじゃん。なんて、バカな妄想は止めて仕事に行く支度をすることにした。

サクがいなくなり、ひとりになると何故か気になる楽譜の山。


謎の黒い楽譜は見間違いじゃないよね?

あの温厚なサクが黒く塗りつぶすなんて普通じゃない。まだサクがやったって決まったわけじゃないけどさ。

もう一度見てしまおうか悩んだけど、止めた。

また見たら余計に気になるだけだし、何度見たって答えなんて分からないんだから。