「一緒に食べよう。そのために早く帰ってきたんだから」
もう、やっぱりサクは子どもみたい。でも私が帰ってくるのを待ってる姿を想像したら、なんか可愛かったよ。
サクは甘い物が好きなんだね。私も好きだけど。
「……それで?今日はどこに行ってたの?」
サクがケーキを食べながら私に聞いてきた。
ご機嫌の時に言っていいものなのか迷うけど、言うなら今しかない。
「私ね……明日からサンセットで働くことになったよ」
私は食べかけのケーキを無意味に見つめた。だって怖くてサクのほうを見れないんだもん。
「よかった」
そんな声が耳に聞こえてきた。
え?今なんて言ったの?
私がサクを見ると、サクは一番大きな苺を私のケーキに乗せた。
「ノラの仕事が決まったお祝い。ケーキが無駄にならなくて済んだ」
「………」
「って自分で買ってないから偉そうに言っちゃいけないね」
……バカ。本当に優しすぎるよサクは。
私がサンセットで働くことをお祝いしてくれるの?
サクの思い出の場所に踏み込んでいいの?
私は涙を必死に堪えながら、サクがくれた大きな苺を食べた。