スタッフルームは表の店内と違って散らかっていた。

落書きだらけのテーブルに汚れたソファー。壁には海外のアーティストのポスターや、ちょっとエッチな水着の切り抜きが貼られていた。


「騒がしくてごめんねー?あんな感じだけど、みんないいヤツだからさ」

鉄さんはソファーに座り、タバコに火をつけた。

……あ、この匂い。またサクにバレちゃうかも。


「あの、鉄さん。私電話で言ったとおりここでは……」

私は入り口に近い場所に立って帰りたい意志を見せた。


「なんで?いいじゃん。ここで働きなよ」

鉄さんはフッーと煙を天井にはいた。


テーブルの灰皿には山のようなタバコの吸殻。
まるでジェンガのようにそれは積まれている。

こんな雰囲気の空間に来たことはないから、なんだかちょっと怖い。


「私……帰ります。本当にすいません」

そう頭を下げると、鉄さんは静かに言った。


「俺は亮じゃなくてノラちゃんに聞いてるんだよ?」

亮という言葉にドアノブを持つ手が止まってしまった。


「それともあいつの許可がないと、ノラちゃんはなにもやっちゃいけないの?」

分かってる。わざとそんな言い方して私を挑発してるって分かってるけど……。


「違います。サクは私にダメなんて言ったことない」

どうしてもサクを悪く言われている気がしてムカついた。