サクは少し寂しそうな顔をしたけど、またすぐに歌を奏で始めた。


――♪♪

後ろの噴水の音とサクの音色がリンクしてる。例えるならサクの歌声は無色透明で、私に色がないからだろうか。それはスーッと心に染みこんでくる感じ。


やっぱりなんだかもったいない。

だってこんな歌を作れる人はサク以外いないよ。

大げさに言えば天才だよ。

才能なんて言葉じゃ言い表せないくらい。


それから暫く経って、サクはギターをカバーに閉まって腰を上げた。
 

「そろそろ帰ろうか。お腹も空いてきたでしょ?」

いつの間にか辺りは暗くなっていて、公園の外灯がオレンジ色になっていた。公園内には人もまばらで、いるのはジョギングをしている人かイチャイチャしているカップルぐらい。

そんな人たちを通りすぎながら、私はあることをサクに聞いてみた。


「サクは歌っている時、なにを考えてるの?」

なんとなく気になった。

だって、こんなにも沢山のメロディーを生み出すことができる頭はどうなっているのかなって。


「えー難しいこと聞くね。考えたことないけど、今日はノラのこと考えてた」

……ドキッ。

ふいにそんなことを言うからちょっと動揺しちゃったじゃん。


「だってノラずっと俺の歌を聞いてくれてたでしょ?時々ちょっと泣きそうになってたし?」

「な……っ」

もう、またからかわれた。


でも泣きそうなってたのは本当だよ。

何度も何度もね。