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そして、また夜がやってきた。


「電気消すよ」

私はまたサクのベッドで寝て、隣には布団が一枚。

もう着ることはないと思っていたスウェットからは、やっぱりサクの匂いがする。


2日目の夜。今日も私はサクのことを何も知らないまま眠りにつく。聞きたいことは山ほどあるけど、サクが何も聞いてこないから。

それに救われているような、少し怖いような複雑な気分。


「ねえ、ノラ」

暗闇の中で声がした。


「……な、なに?」


ベッドからチラッと見ると、サクは私に背を向けていた。その背中は大きくて男の人って感じ。


「明日休みだから買い物でも行こうか。色々必要な物もあるだろうし」

私はサクの背中を見たあと、ぼんやりと天井に目を移した。


必要な物?私お金なんて持ってないよ……なんて、今さら言っても笑われるだけ。

だから一番重要で、一番確認しなきゃいけないことを言っておこう。


「……私、まだここにいてもいいの?」


ずっとじゃない。

そんな厚かましいことは言わないけど、明日とか明後日とかそんな想像できる未来の話。


「ノラがいたいだけいればいいよ」

サクがこっちを見ているのが分かったけど、私は気づかない振りをした。


部屋のカーテンからは外の街灯が見えて、それだけが唯一の明かり。いつの間にかサクの寝息が聞こえてきた。


……疲れてたのかな?サクはなんの仕事をしてるんだろう?

そんなことを思いながら、私も眠りについた。