***


それから数日後、今日は珍しくサクも私も仕事は休み。

どこか行こうと計画していたのに、ふたりとも起きたのは昼過ぎで思わず笑ってしまった。


「ノラ前髪跳ねてる」

クスクスと笑うサクの顔はやっぱり子どもっぽい。お揃いのスウェットを着て目覚める朝の光景にはもう慣れた。

「おいで、直してあげる」

サクに手招きをされた私は迷うことなく傍に寄った。


「もうお昼だけど、どこか行きたいところある?」

そう言いながらサクはクシで私の前髪を撫でていく。

黒い髪に黒いスウェット。右目尻の泣きぼくろにサクの優しい匂い。


……サクは今も彩さんが好き?

そんなことを聞いてしまいたくなった私は幼いよね。


「……散歩。どこでもいいからサクとゆっくり歩きたい」

自然にそんな言葉が口から出てきた。

だってどこへ行きたいかと聞かれたら、私の答えはサクの〝となり〟だから。